ドイツ通信50「言葉は進化する」


2010021329言葉は進化する

 

言葉は生き物です。日常使われている言葉も、日々進化・退化していきます。同一言語内では、使われなくなっていく単語があり、新しく創造される単語があります。言語“種”で見れば、話し手が居なくなることにより、言語そのものの存在が消えてしまうこともあれば、“新種”の誕生も起こり得ます。

 

 例えば、先日訪れた隣国オランダで見かけた“単語”はドイツ語のそれと非常に似通っていました。けれどもこの2つの言語は、異なる言語として認識されています。またブレーメンでは、北ドイツの方言・低ザクセン語(低地ドイツ語)も話されていました。当地ではプラットドイツ語という名で通っています。この言語は標準ドイツ語の変遷とは異なるルートで成立した言語のようですが、地理的要因から“ドイツ語”の一種であるような名をもちます。ただ、この言語は“ドイツ語の一方言”ではなく、歴とした別の種類の言語としてカウントされているようです。何をもってひとつの言語体系として認められるのか・・いろいろと疑問の残るところです。

 

 

 それではこの事実はどのように捉えればいいのでしょうか?

 

ドイツにおける“Kiezdeutsch”についてです。トルコ人を始めとする移民が多く集まる地域で主に話されている、独特の“話し・くずし”言葉です。この特有のドイツ語が、移民子孫のみならず、ドイツ人の幅広い年代層にまで浸透しており、ある程度の市民権を得ているようなのです。

 

 日本語で言えば“略語”みたいになるのでしょうか。必要な冠詞や前置詞をとっぱらったり、単語をくっつけたり、平易な単語で表したり。ある言語学者によると、これは“ドイツ語の誤使用”や“移民ドイツ語”ではなく、“別の新言語=Kiezdeutsch” であると解釈されています。標準ドイツ語を自由に操れない人たちが使用する言語ではなく、ドイツ語能力を十分に取得しているドイツ人がケースバイケースで日常生活にうまく取り入れている言語だから、というのがその理由です。

 

 この“現実離れした” 言語学者の主張に、移民の居住区にある学校の教師は“クラスの5分の4は標準ドイツ語能力に問題を抱えているのが現状”と警笛を鳴らしているのも事実であり、私としては、明らかに“言葉の乱れ”なのでは?と思ってしまいます。

 

 

 言葉は生き物です。変化は自然な流れであり、必然でもあります。しかし・・。世界の共通語になり得るには、些か文法がややこしすぎた(英語に比べて)ドイツ語。ある程度“厳格”なドイツ語がいつまでも残ってほしいな・・と、私は思います。

 

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