湖北の古民家


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滋賀の湖北地方には、すばらしい民家がたくさん残っている。うまく再生して、時代の波を乗り越えて残っていってほしいのだが、昨今の建築における変化は激しく、住み心地という点ではとてもついて行けなくなっている。というか、とにかく冬寒いのである。リフォームしたらよいのであるが、高気密を主構造としたメーカーでは、せっかくリフォームしても古民家の良さを生かせないし、逆に主構造の寿命を縮めてしまうかもしれない。そこで、通気断熱工法の出番となるわけだが、まだまだ知名度が低い。もう少し早く出会えていればという例も少なくない。湖北に、早く古民家リフォーム専門の会社ができてほしいと思う。そして、一棟でも多くの民家が残ってほしいと思う。さて、この建築物なのだが、立て替えのため解体されることとなり、何とか、その古材を生かそうと当社が解体移築することとなった。聞けば、江戸の末期に建てられたという。彦根藩にお金を貸していた先祖が、桜田門外の後、彦根藩取りつぶしの噂が立ち、弁済をせまったところお金はないが、物と人ではあると、この家を建ててくれたという。それだけにありがたきことと、代々当主は、家に改変を加えず大事に守ってきたらしい。解体してわかったのだが、右半分はケヤキ作りでとても立派、梁には漆まで塗られていた。彦根藩の威信と意気込みがうかがえる建物だった。しかしながら、残念なのは左半分の座敷周りである。あきらかに右半分とは大工の手が違う。しかも、材料が雲泥の差である。材料が細すぎて、組み立ててみたら胴差しがたわんできたのだろうか、途中から丸太を上に仕込んだりしている。たてている途中で彦根藩減封になったかと思わせる。解体したが当時の棟札はなくそれ以上のことはわからない。玄関にケヤキのすばらしい持ち送りが配されていたが、解体途中に盗難に遭い、なくしてしまったのが悔やまれる。

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