柿渋


 

伊吹山と峯島邸

伊吹山と峯島邸

柿渋との出会い

 初めて住宅に柿渋を使ったのは、平成8年伊吹町の峯島邸に関わったときだった。内装材に白木材を使ったため、何か汚れ止めに塗りたいとのことだった。

お施主様の峯島さんは、以前住宅メーカーにおられたことがあって、そこの展示場にあったモデルハウスで、働いていて体をこわされた経験があり、新築のにおいには敏感で、石油系の化学塗料はさけたいと、希望されていた。今で言うシックハウス症だったのかもしれない。

柿渋のことは以前から知っていたが、ちょうどそのころ創刊した雑誌に取り上げられたこともあり、早速、製造元の「トミヤマ」さんに問い合わせた。案外近くにあったので驚いたが、値段的にも他の塗料に比べると手頃であった。

社長の吉村さんは気さくな方で、色々相談に乗ってくださった。それまでは、ベンガラの他には、オイルスティンや、ガードラック、ステンプルーフ、キシラデコールと言った、溶剤系のものを使っていたが、さわると手がかぶれるし、くしゃみが止まらなくなったり、下痢したりするので困っていた。柿渋にはそういう副作用はほとんどなく、うれしくなってきた。

最初は、腐ったようなにおいがするので、辟易したが、乾くとすぐにとれた。柿渋を塗って良かったのは、最初無色(5倍に薄めた)だったのが、時間がたつにしたがって、ほどよい飴色になって、とても良い感じになった。

杉板などは本来、白木の部分と赤身の部分の色の差が激しく、ツートンカラーになって木目が引き立ちすぎて落ち着かない感じだが、柿渋を塗ることによって、色調が整えられ、落ち着いた感じになる。白木の場合は手の油が付いて、施工後何年もしてから、手の形がシミとなって浮き上がってきたりすることがあるが、柿渋を塗っておけばそういう心配はない。

柿渋は、高分子タンニンが主成分で、木に塗ることによって、防虫、防水、防腐、抗菌効果など良いことずくめである。作り方は、青い未熟の渋柿を、つぶして搾り、発酵させてつくる。製造元のトミヤマさんではそれから、5年ぐらい寝かして、熟成するという。

直接触れても安全で、肌荒れ防止や、やけど、しもやけ、虫さされ、アレルギー症状の緩和などの薬効もある。トミヤマの社長吉村さんは、毎日、のんでいらしゃるらしい。脳卒中、高血圧、動脈硬化、胃潰瘍などに効く薬理効果もあるらしい。味は渋くてにがいらしいですが。

京都と奈良の境、南山城村の事務所を訪ねると、柿渋のショールームもあって楽しい。そして、柿渋の可能性と多様性にも驚く。興味のある方は、是非、訪ねてみて欲しい。

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