ドイツ通信26「美術館大改築」 2009年07月10日


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美術館大改築。

ブレーメンは、それほど大都市ではありませんが、それなりに美術館や博物館があります。現代美術館や科学館、民族博物館のようなものまで。その中でも150年以上の歴史を持ち、絵画中心に収蔵する「Kunsthalle」。ブレーメンで(多くの日本人が知っている画家の)マネ、モネ、ピサロ、ゴーギャンやゴッホなどの絵画が見られるのは(恐らく)ここだけ。他にも宗教画やドイツ人画家の作品など時代を超えた貴重なコレクションがあります。この美術館が現在、大改築されています。完成するのは2010−2011年の冬期。長いお休みに入っています。

 

実はこの建物、22年前にも一度改築されています。新聞報道によると、当時の改築費用は、コレクションの一つであったルノワールの絵画を売り払った事でまかなわれたそうです。つまり、ルノワールの代価を使って改築された建物が、たった22年で取り壊され、再改築されているのです。この事実に美術愛好家からは非難の声があがっています。「ルノワールが無意味に犠牲になった!」と。今回、この美術館が改築に乗り出した本当の理由は記事内では触れられていません。

 

美術家でもある語学学校のクラスメイトによると、「もっと世界に通用する美術館になるための改築」なのだということです。作品の専用搬入搬出口がなく、各展示室も狭く、収納庫も狭い。この設備では貴重な作品を借り出すことができないので、それを克服し、もっと大きな展覧会を開いたり、世界的に有名な作品を招くことで、入場者数を増やそう、というのが目的だということです。

 

こういった社会的施設は何時も“運営・経営”に矛盾を抱えています。お金を儲け、利益を上げる事が存在目的ではありませんが、作品を所蔵したり、展覧会を開いたり、美術館として成り立つためには“資金”が必要です。美術作品にとっては、公開することは劣化することであるため、収納庫で保護されているほうが、都合がいいに違いないのです。しかし、“お金”のために作品に働いてもらう必要がある・・。

 

作品の保存状態を良くするため、鑑賞者の便利を計るため、展覧会のレベルをアップするため、そして収入を増やすため、の改築。吉と出るのか凶とでるのか分かりませんが、幸いなことに、今回の改築に際し、絵画が売却された事実はないようですので、来年、どんな展覧会を以てオープンの日を迎えるのか、楽しみに待ちたいと思います。

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