ドイツ通信29「マリーアントアネット1」


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赤字・・の原因は??

 

「Das Musical Marie Antoinette」。このポスターや広告は私がブレーメンに来た9月から見かけていました。実際上演が始まったのが1月30日。長い宣伝期間と上演期間を経て、先日の5月末をもって、4ヶ月におよぶ興行が終了しました。

 

 なんとこのミュージカル、日本が原作、演出を手がけた作品です。原作は私も高校時代に読んだ、遠藤周作の「王妃マリー・アントワネット」。そして、音楽と脚本は日本側が依頼して、ミヒャエル・クンツエ(脚本・歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽)のコンビ担当しています。この2人の名前を聞けば、ピンと来る人もいるのでは?というくらい日本ではメジャーな2人です。日本の作品が海外で4ヶ月に渡って上演されるというのは歴史的に見ても相当な快挙!ということだったようです。

 

 ミュージカルの内容、感想については割愛しますが、なぜ日本で“マリー・アントワネット”という女性はこんなにも有名なのでしょう。併せてフランス革命(単語自体も少しの時代背景も)や彼女がギロチンにかけられた事実もよく知られています。これは、ドイツ人に言わせると(ヨーロッパ人に言わせると?)奇怪な状況のようです。過去に遡っても、日本とフランス、または彼女の出身国オーストリアとの特別に固い接点はありません。なのに・・・??

 

 理由の一つとして関連書籍や漫画が挙げられるのでしょうが、私には義務教育教科書への採用が、彼女の認知度アップに貢献しているのかな、と考えます。こちらの人が日本の義務教育教科書を見たら驚くかもしれません。(日本で、遠く離れたヨーロッパの歴史をも習う事。しかも日本が世界の舞台に進出し、日本史と世界史が混じりあってくる前の出来事を・・。そう考えたらこちらの教科書で日本の事をどう習うのかも気になりますね)。

 

 

 余談が長くなりましたが、この興行、結果はどうだったのでしょうか。4月19日の上演中と、上演が終了した後の6月3日の新聞にこのミュージカルのことが取り上げられていたので紹介したいと思います。

 

 まず、このミュージカルは、芸術的にはかなり評価されており、音楽も脚本も演出もキャストも“見事”と、すばらしい成功を収めたミュージカルの部類に入ります。ただ、収益的な面から見ると、1.5ミリオンユーロ・・つまり15000000ユーロの赤字で、総工費は5.8ミリオンユーロだったということです。想像できない数字ですが、具体的な数字を挙げますと・・。4ヶ月の間に予定されていた興行は120回。チケット総数は174000枚。そのうち110000枚がさばければ、“黒”、というのが、当初の劇場支配人の読み。終了してみると結局売れたのは90000枚で少々足りなかったようです。しかも、元々の予想がチケット平均売価を50ユーロと仮定しての算出であったにもかかわらず、実際にはそれが37ユーロにとどまってしまったため、更に赤字の額は増大したと思われます。正規のチケット料金が37〜74ユーロでしたので、販売数を伸ばすために相当の“大売り出し”をしたのかもしれません。

 

 この興行収入的には失敗のミュージカル。その原因を、関係者はドイツへの旅行客が3.4パーセント減少した事で、最終的には劇場に脚を運ぶ客が25%も落ち込むことにつながったと分析。また、制作費が嵩んだ事も指摘しています。ただ、具体的な数字に一喜一憂するよりも、“芸術”“ミュージカルの質”の面から見ると、大成功であることは間違いなく、そこに重きを置くべきだ、というのが大凡の見解。4月19日の段階で(上演が既に半分以上終わり、だいたい結果が予測できそうな頃)「ミュージカルの本場ニューヨークでも興行収入的な問題からミュージカルの上演数が減るほど、この分野は厳しい状況にある中で、ブレーメンでの客の入りはなかなかだ」と強気、楽観発言をしていた支配人は、全日程終了後も「他国で上演するなど活用する事で収益を挙げる事ができる」とこれまた前向き。

 

 個人的には、楽しめたミュージカルでしたし、見に行った他の人からも絶賛の声を聞いていますので、初演が“ブレーメン”だったというのが、収益的に振わなかった最大の理由?とか?? さて、今後どうなっていくのでしょうか?もう一回日本へ輸入、とか??

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