ドイツ通信36「ブレーメンのローラント像」


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ブレーメンの歴史 ローラント

歴史というのは本当に面白い、何でもなかったことが伝説になり、語り継がれる。実はそれには深い背景があり、象徴的な話だけが残されるのかも、そして市民に長い間かかって、ある種のアイディンティティを与える。で、忘れないようにそれを石にまできざんでしまうのはやっぱり、ヨーロッパ的。ローラントの深いーイィ話です。

 マルクト広場に立つローラント像。市庁舎の建物と並んで世界遺産に登録されています。中世文学『ローランの歌』に登場する英雄ローランの像という事だそうです。実在の人物ではない、ということでしょうか。  さて、ローラント。ハンザ自由都市ブレーメンの象徴的存在なのですが、この像を観察してみると・・面白いことが見えてきます。  まず、注目してほしいのは、ローラントの膝です。“とんがり”がくっついています。このとんがりの幅は、ブレーメンにおける昔の度量衡単位のElleで、商取引で使われていたそうです。  そして、気がつく人は少ないと思うのですが、ローラントの足の間に、一人の男がいる(踏まれている??刻印されている?)のです。この人物は自力では立って歩けない、身体に障害を抱えた男です。ローラントの周りには膝の高さくらいに柵が設けられているため、この像を遠くから見上げたり、単に近寄ったりするだけでは、残念ながらこの男には気がつくことはできません(多分)。でもこの男に関しては面白い説話が残っています。

 

———エマという伯爵夫人がいました。たいへん慈悲深い女性で、夫である伯爵の死後、遺産や所持品などの財産で、市民に施しをしていました。しかし、伯爵の弟にあたるベノ公爵はそれをよく思わず、彼女の死後には自分自身やその息子に受け継がれるであろう遺産を、残してほしいと思っていました。 ある時、ベノ公爵がエマ伯爵夫人を訪問し、側近たちとともに、ブレーメンを通りかかったとき、ブレーメンの代議士たちはエマ伯爵夫人に、一周するのに一時間ぐらいかかる広い牧草地が欲しいと訴え、エマ伯爵夫人はそれを与える事を約束しました。 ベノ公爵は、エマ伯爵夫人に、「遺産で市民に施しばかりするのではなく、守ることも少しは考えた方がいい」と進言。夫人は「神が与えた富ですが、あなたの言う事にも一理あります」とその忠告を素直に聞き入れました。悪賢い公爵は夫人が素直に従った事に驚きつつ、エマ夫人を策略にかけるべく、「今後、市民への施しなど、財産の管理は私に一任するよう」言いました。エマ夫人は、何の疑いも持たずそれに同意しました。 それを聞くや否やベノ公爵は元来た道を戻り、先ほどエマが施しをした物乞いの所まで駆けて行きました。驚いた事にその物乞いは、身体に障害を抱える男でした。ベノ公爵は“この物乞いに対して・・今こそ、エマ伯爵夫人が了承した事を実行する時だ(民への施しは自分に一任)”と物乞いに対しひどい仕打ちをしました。 それを見ていた市民は嘆きの声を上げ、エマ伯爵夫人はその男の体に手を当てて祈りました。市民は疑いの目で見ていました。エマ伯爵夫人はその男が自力では立てず、歩けず、毎朝夕誰かにつれて来てもらい、つれて帰ってもらっている事を分かっているのだろうか・・と。 エマ伯爵夫人はその男に対し、立ち上がるように促しましたが、もちろん男の足は機能しません。男は這い始めました。夫人の側近がその男の這う道筋に付き従い、100回這うごとに一本支柱を建てていきました。男は這い続けました。最初は見ていた市民も、見飽きて家に戻ってしまいました。しかし、午後になってもう一度そこまで出て来たとき、市民は見つけました。ずーっと遠くはるかまで支柱が続いているのを。そして、男が引き返し、こちらにどんどん近づいてくるのを。そして彼らは、男が這い続けるのを夜になるまで見守りました。 太陽が沈むころ、男は街に戻ってきました。そして彼の這った跡は、ぐるりと支柱で囲まれました。この土地はまさに、市民(Bürger)が牧草地(Weide)として求めた大きさそのままだったのです。これは1032年のお話です。

 

 今でも中央駅の裏側は“Bürgerweide”(市民の牧草地)とう名称で呼ばれており、誰もが立ち入りできる場所になっています。(ただの広場と言うか・・に思えますが)ブレーメン市民はこの偉大な男に尊敬の念を抱き、彼の存在を心にとどめ、後世に語り継ぐために、その男をローラントの足の間に刻んだということです。

 

エマ伯爵夫人は夫の死後40年生き、死後は大聖堂地下に埋葬されました。」

 

 実際の所、ローラント像は1404年に立てられた・・ようなのです。いつからこの“物乞い”像が刻まれていたのか・・は(私には)不明です。そして、何の関連もない二つの話と人物が、あたかも深い関連があるかのように存在するのには、深い意味でもあるのでしょうか???

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