今年最初の忘年会で
今年最初の忘年会を京都の割烹「みちば」で行った。何人か誘ったのだが、結局集まったのはいつもの究極のメンバーであった。ここの店は、カウンター席の他はテーブル席もあるが、ここに誰かが座ってるのをあまり見たことがないので、基本カウンター席が中心である。
当初、有名な料理の哲人と親戚だとか何かで紹介を受けたのだが、この店の気に入っているところはは、主人が釣りもするし、素潜り、手づかみ何でもこなす人なので、料理もおいしいが、話もかなり面白いからである。時には素材を語るときも、いちいち、学名で話す。
当方も結構マニア揃いで、日頃蘊蓄にうるさい人が多いのだが、大将の博学ぶりには、一同感心するばかりである。どこの何がうまい、だの誰がそれを発見しただのと、掛け合いで蘊蓄を開けかす内に奇妙な緊張感が生まれ、その緊張感がよけいに料理をおいしくさせている気がする。
だが、そんな中で私が本当にカンシンしているのは、この店の置物である。さりげなく店の隅に置かれた、銅細工で造った行灯と、古民家の模型は実に興味深い。
聞けば店の主人の実家は代々銅職人の家で、四男坊の彼は家業を継がなかったが、上の二人は跡を継いでいるという。家は南禅寺の中にあり、お寺付きの職人さんだったらしい。店の置物は、彼の父が晩年、手慰みに造ったという。今見ても、どこでどう継ぎ足してるのかさっぱりわからない。まるで、鋳型で溶かしだして造ったように見える。実家の兄たちも、よくわからないところがあるらしい。
恐るべし京都の職人である。そんな主人に、米原の古民家改修工事で出た長押の飾り金物を見せてみた。一目見るなり、素性を言い当てた。私は、椿の実か、御茶の実と思っていたのだがこれは、橘だという。しかも京都の職人の作ではない。何か違うモノを創っている人が、頼まれて作ったのではないかという。
帰ってから、調べてみたら、確かに家紋の橘に酷似している。この飾り金物、元は京極氏の菩提寺、柏原の徳源院に建っていた館に使われていた。橘と言えば彦根井伊家の家紋である。
ちなみに京極氏の家紋は四つめ結いである。何故か。彦根の仏壇職人が手慰みに造ったか。興味は尽きない。
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